コラム・情報
昔の喫茶店の役割
昭和初期には、アルコール、洋食と女給のサービスを売りにする「カフェー」と、コーヒー中心の飲物、軽食を提供する「喫茶店」が異なる業態の店舗として認識されていました。
この頃には「喫茶店」は気楽にくつろげるたまり場として市民に受け入れられるようになりました。
読書は喫茶店での楽しみの一つです。薄暗い店内にコーヒーの香りがたちこめ、JAZZの音楽がかかる店内の中、ゆっくりと流れる空間。
手描きのメニューや年季の入った壁、全席喫煙の店など、中高年の男性にとっては居心地のよい場所でした。
そのため昭和のサラリーマンたちの商談の場としても使われていました。
また「隠れ家」とも呼ばれ、人目を気にせずゆっくり過ごせる‘‘家庭でも職場でもない第三の居場所”として愛されてきた喫茶店。
今も「第三の居場所」としても喫茶店は好まれているところから、昔からずっと、のんびりできる場所は必要だったんですね。
それ以外にも喫茶店の重要な役割として「待ち合わせ場所」、「社交場」があります。
携帯電話などの通信機器が多く普及していなかった昭和時代。
人々は喫茶店を待ち合わせの場所にしていました。「〇日の△時にここの喫茶店で待ち合わせね。」一人一台携帯電話を持つのが当たり前の現代では想像できません。
そのため、喫茶店には電話番をする方がいらっしゃったそうです。
「〇〇さ~ん、いますかー?△△さんから電話で、これから□□へ向かうそうで~す!」
という具合だそう。
今回、取材させていただいたギャラリー喫茶GRACEさんもお客さん同士の待ち合わせ場所としても利用されており当時は10人ほどの女の子がウェイトレスや電話番として働いていたようです。
社交場としての機能として、喫茶店の先駆けといわれている可否茶館は1階にトランプ・ビリヤード・書籍などが楽しめるスペースで、2階を喫茶室にしていて、ブラジル移民に携わった水野龍氏が始めたカフェーパウリスタやカフェープランタンなどの喫茶店は文学者や芸術家が集まる社交場になっていたそうです。
コーヒーを片手に談笑というのは今も変わらず続く、喫茶文化なのかもしれません。
そして近年、昔ながらの純喫茶は若い世代の間で密かなブームになっています。
特に、SNSの影響によりZ世代を中心とした10代から20〜30代の女性客も増加しているようです。若者たちにとっては、純喫茶のクラシカルな内装や、クリームソーダやナポリタンといった昔ながらの定番メニューは新鮮でエモい、SNS映えするスポットになっています。
現在、サードウェーブと呼ばれるコーヒーブームの中、喫茶店はカフェとはまた違う趣と古き良き時代を感じられる場所として魅力を発しているようです。
ライフスタイル(Webサイト)、コーヒーと日本人の文化誌(著書)から参考、一部抜粋。