コラム・情報

アミコ屋上プレイランド

駅前のデパートや百貨店が賑わっていた昭和後期、地下やレストラン階で美味しい物を食べ、ショッピングを楽しみ、屋上で遊ぶというのが休日の家族の過ごし方のひとつでした。しかし、郊外に大型モールが出来始めると、百貨店・デパートはどんどん姿を消し、今では屋上プレイランドが残るものは全国に5箇所ほどとなってしまいました。
徳島駅前にはそんな数少ない屋上プレイランドが今もあるんです!
あの懐かしい乗り物やゲーム機が今も稼働しているアミコ屋上プレイランドに取材に行って来ました!

 

何度も消滅の危機があった

ビルの所有者は徳島都市開発さん。

昭和58年のそごう開店当時、梅田のヘップファイブなどの大きな遊園地事業を行っている会社が始めました。最も賑わいをみせていたのは平成2年(1990年)頃、しかし人口減少や少子化の影響もあり、その後何度もプレイランドの運営会社は変わっていきます。他県の百貨店やデパートがどんどん閉店していくなか、店長Iさんは「徳島SOGOもいずれは…」と危惧していました。

そして遂にやってきたプレイランド存続最大の危機、令和2年(2020年)のそごう閉店。都市開発さんや常連のお客さんからは残して欲しいとの声があがりました。それに応えた現店長のIさん、「徳島SOGOが無くなっても、もう一度再興させたい」との思いで個人で引き継ぐことを決意。他にも地下のパン屋さんやいくつかの店舗さんが残留を決め、アミコプレイランドの存続が可能となりました。もし全店舗が出ていってしまっていたら、このビルは閉館となっていたかもしれません。

アミコプレイランドのI店長

彼が10歳の時、徳島そごうがオープン。18歳からこの屋上プレイランドで働き始め32年、この仕事一筋の50歳(令和6年3月取材時)。毎日プレイランドの掃除から始まり、乗り物・ゲーム機のメンテナンス、お客様の案内に故障対応まで全てをこなす大ベテラン。もともと機械いじりが好きだったのかなと思ったら、まったくそうではなく働きながら実践で修理スキルを身につけたのだそうです。

ここで働く楽しみは、よく遊びに来てくれる子どもがI店長のことを覚えて「おっちゃん」って懐いてくれること。小さかった子が成長していくのを見たり、保護者と話したりも楽しみのひとつだそうです。

本人の希望で、名前は出さずに店長Iさんとしております。人見知りとおっしゃっていましたが、取材の際にはとてもフレンドリーに色々お話しをしてくれました。アミコプレイランドを訪れた際、それっぽい方を見かけたら是非話しかけてみてください。置いてある乗り物やゲーム機のいろいろ興味深い話を聞けるかもしれませんよ。









・レトロ感あふれる乗り物とゲーム機

一度でもこのプレイランドを訪れたことのある人なら気づくはず、ここにある乗り物やゲーム機がなんともレア物で、他のゲームセンターじゃもうお目にかかることが出来ないもの達だということに。

実はここの乗り物やゲーム機の大半が、レトロゲーム愛好家達の所有物を借りているものだったり、県内外の遊園地などで廃棄されたものを引取ってきて、店長さんが修理したりしたものなんです。

年代物のため廃盤や廃業になってしまっているものがほとんどなので、故障すると基本はI店長さんが直す。入手困難な部品はレトロ業者さん達の協力を得たり、修理困難なものは愛好家さん達の手を借りたりと、I店長の修理技術と人脈をもって、ここのレトロでレアな乗り物・ゲーム機たちは今もなお稼働しているのです。


I店長に人気の高いものを尋ねると

● アンパンマン列車:エスカレータで上がってドアを出てすぐに目に入る、子供達に人気の乗り物

● くまの綿菓子ロボ:出てくる綿菓子を自分で箸にまきまきするのが楽しい

● 運転型のゲーム機:ディスプレイはブラウン管。中でもトラックゲームは全国から遊びに来る人気ぶり

I店長のお気に入りを尋ねてみた

● ジャンケンマン:敢えて残してある傷やサビが懐かしさを醸し出すが、メンテナンスはバッチリです

● ルーレットゲーム:40年以上前のゲーム機で前の社長さんから譲り受け修理したもの

新しい物よりも、古いものを直して大事に使っていきたいと語るI店長。

現状維持が目標と言いつつも、「毎日同じ物ばかり見てると飽きるから面白そうなゲーム機増やしたいな、もちろんレトロ感あるもの。持ってる人リースしてくれないかな」とも語っておりました。誰かおりましたら是非アミコプレイランドまでご連絡ください。きっとI店長ならきめ細かいメンテナンスをしてくれるはずです。

なんだあのプール⁉

屋上に水をはったプールのような物を見つけ、取材中気になって尋ねると、なんと水上ボール用のプールでした!大きなエアボールの中に入って水上を歩けるやつ!めちゃ楽しそうでしたが、私は対象年齢を余裕で越しており消沈。こども限定、土日限定で天候が良い時のみ運営されています。年齢と天候がマッチしたなら、ぜひ遊んでいってください。詳細は写真の中に。

I店長のこだわりは三つの「安」

お客さんに「安心」・「安全」に遊んでもらえるように、I店長は日々チェックとメンテナンスを行っています。雨の日には外に設置されているものにビニールシートをかけ、また覆いきれない線路などはサビないよう翌日にこするのだとか。ぱっと見は傷やサビがあるゲーム機も、触れたときに怪我をしないようメンテナンスが施されています。

また電気代や物価の高騰はあるけれど、若い親御さんや孫づれの方たちのお財布に優しい場でありたいから「安い」ままで値上げはしませんと強く宣言されていました。1回100円でほとんどの乗り物やゲームが遊べるのはこのご時世嬉しいですね。10円のコインゲームもお得感あります。遊びにきたお客さんが「楽しかった」って満足して帰って、また来てくれたらI店長も満足なんだとか。素敵な満足サイクルです。

今後のプレイランドは

気がつけばこの屋上プレイランドで働き始めて32年のI店長ですが、まだあと10年は頑張りたいとのこと。

お客さん達にはこの屋上で遊んでもらうだけでなく、地下で美味しいもの買って食べてもらったり、他のフロア店舗でお買い物してもらったりして、みんなが協力して盛り上げていけたらいいなと話されていました。

取材を終えて

物が豊かになり、新しい物がどんどん発売される時代となりましたが、子供の頃に遊んだ楽しかった場所やおもちゃは色あせることなく心に残っています。アミコ屋上プレイランドはその記憶を鮮やかに蘇らせ、自分の楽しかった思い出をこどもや孫と再び体験できる素敵な場所です。

またI店長の仕事やお客さんに対する誠実な姿勢に、物を大切に使っていくことの大切さと働くことの意味を気づかせてもらった気がします。

たくさんの人の想いが詰まる今も続くアミコ屋上プレイランドを次世代にも伝えられるよう、友達や家族を連れてアミコビルに休日を過ごしに来たいと思いました。

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